連載:ついにやって来た!大規模修繕

マンションの寿命を延ばす方法とは?

2021.07.16
マンションの寿命を延ばす方法とは?

大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は資産価値を維持してマンションの寿命を延ばす方法を解説していきます!

マンションの寿命はどのくらい?

気になるマンションの寿命について知ろう

マンションの寿命としては、木造や鉄骨といった建物の構造ごとに「法定耐用年数」というものが一律に決められています。

法定耐用年数とは、減価償却費や不動産的価値を算出するために国が定めたもの。国税庁のホームページによると、主流である鉄筋・鉄骨コンクリート造マンションは47年、木造は22年、軽量鉄骨造は27年、重量鉄骨は34年となっています。

ただこれは不動産の価値を算出するための年数なので、本当の寿命ではありません。

そこで寿命については「物理的な観点」と「経済的な観点」から、考える必要があるでしょう。

物理的には100年以上も住み続けられる?

同じ築年数のマンションでも、手厚いメンテナンスを施した建物とそうではない建物では、寿命も変わってきます。

その点、日本では新築物件ほど税制面で優遇される背景があり、中古物件の流通は欧米に比べると少ないというデータがあります。そのため、メンテナンスの意識がそこまで高くない現状があるようです。

対して、中古物件が住宅流通の大半を占めるアメリカやヨーロッパなどでは、築年数で物件を選ぶことはありません。長く住み続けるために、メンテナンスに力を入れるのです。例えばアメリカだと、管理組合の運営状況が住宅購入の判断基準に加わるといいます。管理組合のコミュニケーションが活発でなかったり、修繕積立金の残高が少なかったりすると、自ずと物件価格も下落するのです。

管理組合の運営状況が資産価値に直結するからこそ、住民の管理意識は高くなる傾向に。その結果、ヨーロッパなどでは築100年を超える物件もあるといいます。

なお、国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(平成25年)によれば、「マンションの寿命は120年で、メンテンナンスにより150年まで延命できる」という研究結果も。

さらに長寿命・高耐久性コンクリートの開発により、「200年仕様」「500年仕様」といったマンションの誕生も期待されている現在。物理的な寿命は、思ったよりも長いといえます。

実情は、買い手がつかなくなったときが寿命

ただ、物理的には100年でも住み続けることが可能なものの、実情は少し異なります。例えば2016年、日本初の分譲マンションだった渋谷の「宮益坂ビルディング」が65年の寿命を迎え、建て替えられました。理由は70戸のうち、40戸しか住宅として使われていなかったこと。さらに、給排水管の老朽化などがあるようです。

このニュースは「日本初の分譲マンションの建て替え」として、テレビなど多くのマスコミに取り上げられたと言います。

いくら建物はまだ使用に耐えうるといっても、買い手がいないために取り壊されることもあるのです。

マンションの寿命を延ばす方法とは?

経年とともに劣化していくマンションですが、メンテナンスや修繕を行うことで寿命を延ばすことが可能です。

ここでは主な方法を3つ紹介します。

【方法1】立地状況に合わせた日々のメンテナンス

まずは、日々のメンテナンスが大切です。

例えば、海が近い場合は塩害によって金属部分が錆びたり、窓ガラスに塩がついて汚れたりする可能性も。そのため、小まめな掃除や金属部分の交換などが必要になるかもしれません。

日当たりが悪い場所に関しては、カビやコケが発生しないような対策も施したほうが良いでしょう。

【方法2】定期的な大規模修繕

長く時間が経てば資材の消耗は避けられない

いくらメンテナンスを行っていても、時間の経過とともに、やはり経年劣化は避けられません。雨風や日光による劣化や鉄部分の錆び、外壁の剥がれなどにより、建物の価値も急速に下がってしまいます。

そのため、長期修繕計画をもとにした定期的な大規模修繕は必須。国土交通省では、12年に1度のタイミングを推奨しています。とはいえ、近年では建築業界全体の技術の向上により、2回目以降の大規模修繕の周期を15年に引き延ばすこともあるようです。

【方法3】ホームインスペクションを行う

修繕箇所の見極めが重要

ホームインスペクションとは、建物の劣化状況や不具合の有無を把握する際に行う住宅診断のこと。大規模修繕でどこを工事すれば良いか、把握する際に役立ちます。

大規模修繕では、施工業者が提案した通りに行われるケースも多いといいます。しかし、業者が提案する内容には、今すぐに修繕する必要がない項目が組み込まれていることも珍しくありません。

その点、ホームインスペクションを実施すると、どこを修繕すれば良いか見極めることにつながります。結果として、診断の費用はかかるものの修繕費用を必要最低限に抑えられるわけです。

1回の修繕費用を抑えることができれば、「将来的にお金が不足して大規模修繕ができない」といった事態を避けられるかもしれません。計画通りに大規模修繕を実施できれば、寿命を伸ばすことにもつながりますよね。もちろん、適正な金額の修繕積立金を積み立てていくことが前提ですが。

基本的にホームインスペクションは「5〜10年に一回を目安に実施」。診断結果を踏まえて、長期修繕計画の見直しも検討しましょう。

以上、今回はマンションの寿命を延ばす方法について、解説していきました。

寿命を伸ばすカギは、日々のメンテナンスや大規模修繕。とくに高額な大規模修繕を計画通りに実施するためにも「適正な金額の修繕積立金を積み立てる」「ホームインスペクションで、建物の状態を正確に把握する」ことがポイントです。

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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