理事・管理

値上げが必要な時もある! 修繕積立金が高くなる4つの理由

2022.05.27
値上げが必要な時もある! 修繕積立金が高くなる4つの理由

区分所有者は将来必要になるマンションの修繕に向けて、毎月「修繕積立金」を支払います。数十年後に、資金が足らず必要な修繕を行えなくなるような状況を避けるためにも、長期修繕計画に沿って漏れなく積み立てて行きたいもの。

しかし、途中でマンションの修繕積立金の大幅な値上げを余儀無くされて、必要な金額を集めるのが困難になってしまう管理組合も少なくないようです。何故、そのような事態に陥ってしまうのでしょうか?

今回の記事では、修繕積立金の値上げが必要となる理由について紹介します。ポイントを押さえて、しっかりと積立を行っていきましょう。

「修繕積立金が高い=悪いマンション」とは限らない!

修繕積立金は毎月支払う費用のため、値上げとなると家計が苦しくなる懸念もあるでしょう。しかし、積立金はマンションの資産価値や住みやすい環境を保つために必要な資金です。理由があって値上げを余儀なくされるケースも少なくありません。

詳しくは後述しますが、バリアフリー工事のように、当初は検討していなかったがよりよい環境づくりのために工事が追加され、そのために積立金が値上がりする場合もあります。

修繕積立金が高いというだけで悪いマンションとは判断できないのです。

マンションの修繕積立金が高くなる4つの理由

修繕積立金が値上がりする理由

【理由1】段階増額積立方式を採用している

修繕積立金の積立方式には「段階増額積立方式」と「均等積立方式」の2種類があります。

段階増額積立方式は「現在の所有者が、現時点で将来必要になると考えられる金額を負担する」という考え方に基づく積立方式です。一般的に、新しい建物は修繕が軽微なため、段階増額積立方式の場合、物件が新しい間は比較的月々の積立金が低く設定されています。しかし、年月を経るごとに修繕箇所は増えていき、必要な工事の規模も大きくなるため、将来的に積立金の値上げが不可欠となるでしょう。

新築マンションでは、販売する企業が少しでもお得に見せるために、段階増額積立方式で修繕積立金をあえて安く設定しているかもしれません。その場合、数十年後に月々の積立金が数倍にも値上げせざるを得なくなる可能性があるため、注意が必要です。

修繕積立金の金額が適正かどうかを判断するために、相場感を知っておきましょう。分譲時の修繕積立金の適正価格は、1平方メートル当たり200円程度が目安とされています。これよりも著しく低い金額に設定されていたら、いずれ大幅な値上げが必要になるかもしれません。

一方の均等積立方式は、マンション竣工から建物が耐用年数の限度を迎える迄の期間中に、発生する修繕やメンテナンス費用をあらかじめ算出し、修繕積立金の月々の負担が常に均等になるように設定する方式です。

段階増額積立方式と比較すると、築年数が浅い期間中は、月々の積立金が高い印象を持たれるかもしれません。しかし、長く住んでも基本的には金額が変わらないため、無理なく積立てていける方式といえるでしょう。国土交通省が定める「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、2つの積立方式の内、均等積立方式が推奨されています。

【理由2】人手不足で修繕工事費用そのものが値上がりしている

施工会社で働く職人の数が減少している

そもそもの修繕工事費用の高騰も修繕積立金値上がりの一因です。

日本では高齢化が進んだ影響で、労働人口が減少傾向にあります。施工会社で働く職人の数も減っており、人手不足が深刻化したため、人件費が高騰。その影響で、支払わなければならない工事費用も高くなってきています。

工事費用が値上がりすれば、管理組合はより高額な資金を用意しなければなりません。そのため、積立金の値上がりが余儀なくされるマンションも出てくると考えられます。

今後、日本の人口減少はますます厳しくなっていくと予測されており、それに伴って工事費用も高騰し続けて行くかもしれません。値上がりの可能性も考慮したうえで、余裕を持った資金計画を立てておくのが重要となっていくでしょう。

【理由3】管理会社の中間マージンで修繕費用が高額になっている

普段からマンション管理に関わる様々な業務に対応している管理会社。担当するマンションについて隅々まで熟知しているので、日々発生する管理業務を管理会社に任せっきりにしている管理組合も多いのではないでしょうか。

国交省が実施するマンション総合調査では、国内の管理組合の約4割が、マンション共用部分の修繕を管理会社に委託しているという調査結果が出ています。

修繕を管理会社に一任すれば、管理組合は修繕業者選定や発注の手間が省けるでしょう。しかし、実際の修繕工事を担当する施工業者と大元の依頼主である管理組合の間に管理会社が入るため、中間マージンが発生します。この場合、修繕費用に中間マージンが上乗せされるため、費用を余分に修繕積立金から捻出しなければならなくなるという点はしっかりと覚えておきましょう。

支払いが増えると、積立金値上げの原因になるかもしれません。潤沢な資金を持つマンションなら問題ありませんが、そうでないのであれば、管理会社に委託せずに、管理組合で直接修繕施工会社の選定を進めて行く方が、将来を見据えた節約につながるといえます。

【理由4】長期修繕計画に含まれていない工事に積立金を使用した

長期修繕計画に組み込まれていない、予定外の修繕に予算を使った場合にも、実施した工事の内容に応じて修繕積立金の増額が必要になる場合があります。

修繕積立金は、大規模修繕など長期修繕計画に沿った修繕を使用目的として貯めていく資金です。そのため、計画にない用途に使用すれば、当然資金が足りなくなる可能性が出てくるでしょう。

リニューアル工事やバリアフリー工事など、マンションの資産価値を高めるための設備向上を目指した工事であっても、修繕計画にないのであれば、総会で承認を得たうえで別立てで資金を準備する必要があります。

また、事故や災害などによって設備が大きく損壊した場合も、高額な修繕費用が発生します。その費用を積立金から捻出すると、積立金の値上がりの要因となるでしょう。

修繕積立金は5年を目安に見直す

あらかじめ値上げ金額を管理組合全体に周知しておく必要がある

修繕積立金の値上げを行うタイミングについての決まったルールはなく、マンションが各々の実情に合わせて実施します。

ただし、積立金を滞りなく集めていくためには、あらかじめ値上げのタイミングと値上げ後の金額を長期修繕計画で定めて、管理組合全体に周知しておく必要があります。

長期修繕計画は、数十年という長い期間を見越して立案するもの。そのため、途中で予定外の変化が起こる可能性が大いにあるので、定期的に見直しを行って最新の状態に対応できるように計画をアップデートすることが必要です。

2018年に国土交通省が実施したマンション総合調査では、56.3%のマンションで「5年ごとを目安に定期的に見直している」という回答結果が出ています。お住まいのマンションで、見直しの周期に定めがないのであれば、5年を目安に見直しを実施してみると良いかもしれません。

長く住むなら長期的視点で管理を進めよう

誰でも支出は安く抑えたいものですが、修繕積立金が安すぎるマンションは将来大きな困難が待っているかもしれず、注意が必要です。

逆に、新築分譲時点から修繕積立金が高く設定されている場合は、その時は割高に思えても、長期的視点で考えれば管理に重きを置いた安定運営のマンションといえるかもしれません。

将来、修繕積立金を不足させないためには、定期的な長期修繕計画の見直しが必要です。見直しの適切な周期がわからない場合には、5年ごとを目安に実施するようにしましょう。

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