連載:ついにやって来た!大規模修繕

事前周知でトラブル回避! 住民説明会を開催しよう

2022.01.27
事前周知でトラブル回避! 住民説明会を開催しよう

大規模修繕を控えた皆さんに向け、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は大規模修繕における住民説明会の重要性について解説していきます!

住民からの理解を得るために説明会は欠かせない

住民説明会を実施すれば住民からの理解を得やすい

修繕計画の立案や施工業者の選定、積立金の管理などなど、大規模修繕では多岐にわたる業務への対応が必要となります。そのなかで、修繕の進行に直接関連しないながらも、トラブルを避けるために重要となるのが住民説明会です。

マンションの修繕工事は、住民が日常の生活を送る場所のすぐ近くで進行させていくもの。作業による騒音や塗料の匂い、建物を囲む足場など、大規模修繕工事はさまざまなかたちで住民の生活に影響を及ぼします。修繕工事には、短い場合でも数ヵ月の期間がかかるので、当事者である住民へは事前にしっかりと工事予定の説明をしておくことが必要です。

事前の共有を怠れば、住民からクレームを出されてしまう場合もしばしば。トラブルを避けて、入居者の理解や協力を得るためにも、説明会はしっかりと開催するべきです。

一般的には、住民説明会の当日は、施工会社、もしくは管理会社が中心となって説明を進めます。当日の会の流れなどについては、事前に主導する業者と打ち合わせをしておきましょう。

住民説明会を開催するタイミング・場所は?

説明会を行う会場の準備も必要となる

住民説明会を開催するタイミングは、総会で大規模修繕工事の実施についての決議を得て、施工会社と正式に契約を締結した後です。住民が大規模修繕への準備期間を少しでも長く取れるように、契約締結後はなるべく早く住民説明会を開催しましょう。開催に際しては、多くの住民が集まりやすい日程を選ぶことも重要です。

マンション内に集会室を持つ大型マンションの場合は、会場選びに困ることはないですが、そのような施設がないマンションも多いもの。適した施設がないマンションは、管理人室などを使用したり、自治体が運営する地域センターなどを利用することが一般的です。十分な広さの会場が用意できず、参加者全員を収容できないことが懸念される場合は、説明会を複数回に分けて実施しましょう。

開催日程・場所が決まったら、開催案内を作成し住民へ向けて周知します。開催案内は、マンションの掲示板に貼り出したり、各住戸の郵便受けに投函するなどの方法で住民に知らせていきましょう。当日配布する資料の準備も施工業者、管理会社と打ち合わせをしながら進めます。

住民説明会で伝えるべき主な内容4選

つづいては、説明会で住民に伝える内容についてです。マンションによって事情はさまざまですが、一般的に重要だとされることを紹介していきます。

1. 住民の生活への影響

工事期間は生活する上での行動を制限される場合がある

住民にとって最も関心が大きいのが、大規模修繕工事による生活への影響です。工事期間中は、住民は生活における一部の行動を制限されることが余儀なくされます。

ベランダ防水工事を行う際には、室外機以外のものをベランダから撤去しなければならなかったり、洗濯物を干したりすることもできません。窓の外の足場に作業員がいるので、カーテンを空けられないといったこともよく聞かれる話です。

また、足場を組み立てる時の金属音や工具を使用する際の大きな騒音、作業に伴う振動が室内にまで伝わってくることがあるなど、多くの人にとってのストレスとなるようなポイントは多くあります。

工事による生活への影響は、住民からのクレームで最も多い内容となりますので、事前にしっかりと情報共有をしておきましょう。前もって共有しておかなければ、高確率でクレームに繋がるようなことであっても、事前に説明しておけば理解を得られる場合があるので、特に気を付けたいポイントです。

2. 工事のスケジュール

実際の修繕工事がいつから始まり、完了はいつを予定しているかなど、スケジュールについての説明を行います。

前述の通り、実施する工事内容によっては住民の日常の行動が制限されるので、工程ごとの詳細日程も合わせて伝えたいところ。「いつ洗濯物をベランダに干せるの?」というよく聞かれる内容については「〇月〇日から×月×日までの期間中は、ベランダの防水工事を実施するので室外に洗濯物を干すことができません」といったように、工事期間とその影響をあわせて説明しておくと伝わりやすくなるでしょう。

3. 安全や防犯における注意事項

修繕作業を行う期間中は、足場が設置されたり、資材や工具が置かれたりするなど、普段よりも共用部分に物が多くなります。小さい子どもが廊下を走ったりしていると、足場や資材で怪我をすることなども考えられるため、十分に注意が必要であることも周知しておきましょう。

また、足場が組まれることで、上層階の住戸であっても不審者に侵入されるリスクが高くなります。工事期間中は戸締りをいつも以上に気をつけるように注意喚起をしておきましょう。

万が一、怪我や防犯上のトラブルに見舞われた場合や不審者を発見した際に、報告をするための連絡先を決めておくことも大切です。

4. 工事用ポストの設置

説明会の時には納得していても、実際に工事が始まると、想像と違っていたり、当初は思いもしなかった不都合を感じる住民がいるかもしれません。そんな時には、住民が意見や要望を伝えやすいように工事用ポストがあると便利です。

工事用ポストとは、住民からのご意見・ご要望・アンケートを投函してもらうための専用ポストのこと。マンションのエントランス付近など、住民全員にとってわかりやすい場所に設置します。設置を行う場合は、ポストの用途や設置箇所などを説明会の際に住民へ伝えておきましょう。

ここで紹介した以外にも、住民説明会で伝えるべき内容はマンションの実情によって異なります。どのようなことについて説明が必要となるかを管理会社や施工会社と事前にしっかり確認して、当日の説明会に臨みましょう。

また、住民からの質疑応答の時間を設けて、参加者に疑問を残さないように配慮することも重要となります。

説明会へ参加しない住民への対応

住民説明会で伝える内容は、マンションの全住民に向けて周知したいものです。しかし、どうしても予定が合わず、説明会に参加することができない住民も多く出てくることが考えられます。

なかには、しっかりと説明会を実施していても、いざ工事を始めると説明会を欠席した住民からクレームが出されるケースもあるといいます。

そのため、説明会当日に参加できない住民に対しても、専用の掲示板を設置するなどして、説明会で話した内容を共有することが重要です。特に、共有しておかなければ後々クレームにつながるような重要な事項については、全戸に案内を配布することが効果的となります。

以上、今回は大規模修繕における住民説明会について解説しました。

大規模修繕では、住民の日常生活に大きく影響を与え、時には行動を制限するような工事内容があることを覚えておきましょう。何も伝えずに進めてしまえばクレームを出されるような内容であっても、事前に説明しておけば理解を得られることもあります。トラブルを避けるためにも、しっかりと前もって説明しておくことをお忘れなく。

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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