理事・管理

理事会なしマンションが増える理由は?メリット・デメリットも解説

2023.12.01
理事会なしマンションが増える理由は?メリット・デメリットも解説

多くのマンションで問題視されているのが、理事会役員のなり手不足。高齢化でこれまでの役員が退任したり、仕事や育児で忙しく理事会へ積極的に参加できない住民が多かったりと、従来の運用方法に限界を感じている方も少なくないでしょう。

そこで注目されているのが、理事会なしマンション。外部専門家の手を借りることで理事会そのものを廃止したり、理事会は存続するが業務負担は大きく軽減したりするマンションが増えています。

大きなメリットはあるものの、一方でコスト面などのデメリットも存在する理事会なしマンション。今回はその実情やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

理事会とは?

理事会は管理組合の代表として活動する

マンションでは建物や共用施設の維持管理をするために、区分所有者全員で「管理組合」という組織をつくっています。この管理組合の業務をスムーズに進めるために、一般的には区分所有者のなかから代表として「理事長・副理事長・会計・監事」などの役員を選出します。この役員たちが集まってさまざまなことを話し合い、意思決定や業務執行をする機関が「理事会」です。

理事会は1〜3ヶ月に1回程度で開催され、マンション運営の進捗確認や意見交換をします。具体的な内容としては、管理費や修繕積立金の納入状況を確認する、管理会社からの活動報告を受ける、マンション内で起こったトラブルを共有するなどさまざまです。

理事会なしマンションとは?

理事会なしマンションでは管理を外部専門家に任せる

理事会なしマンションとは、区分所有者から理事会役員を選出しないマンションのことです。維持管理業務は、管理会社の社員やマンション管理士などの第三者に任せます。理事会自体は存続させて外部専門家を役員として迎え入れるケースもあれば、理事会そのものを廃止するケースもあります。

理事会役員の選任が難しい投資型マンションやリゾートマンションでは以前からよく採用されていましたが、原則として分譲マンションでは理事会役員を区分所有者以外から選ぶことはありませんでした。しかし2011年にマンション標準管理規約第35条が改正。理事会役員の資格として「現住要件」が撤廃され、マンションに住んでいない人でも役員として活動できるようになったのです。

改正前:理事及び監事は、マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。
改正後:理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。

その後、2016年の改正では「外部専門家を役員として選任できることとする場合」という項目も追加され、さらに理事会なしマンションへの注目が高まりました。

理事会なしマンションが増える理由

平成30年度マンション総合調査では、外部専門家の理事会役員の選任について「検討している」もしくは「将来的に必要となれば検討したい」というマンションの割合が28.3%。その理由として「役員のなり手不足」「区分所有者の高齢化」という回答が多く挙げられました。

理由1:役員のなり手不足

マンションの理事は、年1回の総会の場で決められるのが一般的です。このとき持ち回りの「輪番方式」や、役員になりたい方が手を挙げる「立候補制」のどちらかで決めることが多いでしょう。

しかしマンションには多種多様な属性をもつ区分所有者が住んでいます。共働き世帯やワンオペ育児、介護などで忙しい方もおり、マンション管理に割けるリソースは家庭によってまちまちです。休日に理事会の活動で時間をとられたくない方もいて、立候補制が成り立たないことも少なくありません。また輪番制だと順番に役員が回ってきますが、全員が理事会の仕事に意欲があるとは限らず、運営に支障をきたす危険もあります。

そんな役員のなり手不足という背景から、理事会なしを検討されるマンションが増えているのです。

理由2:マンション住民の高齢化

住民の高齢化も役員の成り手が減少する要因となる

そして重大なのが、住民の高齢化です。マンションの築年数が長くなるということは、住民も歳をとっているということ。これまで長年役員に就いていた方が高齢のために退任したり、本人や家族の健康上の問題で役員を引き受けられなくなったりすることで、なり手不足へとつながることも多くあります。

またマンションは古くなればなるほど修繕箇所が増え、工事内容も複雑になるもの。管理の課題はどんどん増え、管理費の滞納が増えてくることもあります。マンション管理についてほとんど知識がない住民には荷が重いということで、マンション管理を第三者に任せたいというニーズも高まっています。

理事会なしマンションのメリット

メリット1:マンション住民の負担軽減

先述したとおり、理事会は1〜3ヶ月に1回程度と比較的高頻度で開催されます。理事の半数以上が出席しないと理事会が成立しないと管理規約で決められていることもあり、安易に欠席することもできません。また定例理事会に出席するだけでなく、役員になると管理費・修繕積立金を管理したり、総会を実施したりとさまざまな業務負担があります。

理事会への出席や各種業務という住民の時間的・精神的な負担が軽減されるのが、理事会なしマンションの大きなメリットです。「理事になることを拒否する」「理事会活動に積極的に参加しない役員がいる」などのトラブルも避けることができます。

メリット2:専門知識をもった役員で運営できる

大規模修繕や予算管理など、マンション管理には高度な専門知識が必要になります。区分所有者は専門知識を持っているとは限らないため、スムーズに業務が進まなかったり、正しい結論を導き出すことが難しかったりするでしょう。

理事会なしマンションでは、マンション管理士などの専門知識を持った人に維持管理を任せられます。マンションというのは非常に高額な資産です。管理業務の品質向上が期待できるのは、大きなメリットといえるでしょう。また騒音問題など住民同士のトラブル解決も理事会の業務のひとつですが、第三者が入ることで対処しやすくなります。

理事会なしマンションのデメリット

デメリット1:管理費が高くなる

区分所有者から理事会役員を選ばず、マンションの維持管理を専門家に委託するということは、委託費が発生するということ。必然的に毎月住民がおさめる管理費の値上げにもつながります。管理会社の対応しだいで、管理費や修繕費が高騰してしまう恐れもあるでしょう。

試しに外部専門家を入れてみて、うまくいかなかったら元に戻せばいいと思う方もいるかもしれません。しかし一度理事会をなくしてしまうと元に戻すのは難しいため、運営スタイルを変更するときには慎重に検討することが大切です。

デメリット2:住民の意見が反映されにくい

理事会なしマンションでは、住民の意見が反映されにくくなるのもデメリットです。住民が望んでいる管理方針が採用され続けるとも限りません。定期的な住民アンケートを実施するなど、住民の意見を管理に取り入れられるような工夫が必要になるでしょう。

また透明性の高い運営をするため、区分所有者全員で管理会社の業務についてチェックできる体制も必要です。レポートを提出してもらい、管理組合員であれば誰でもインターネットで閲覧できる状態にするなどの方法があります。

デメリット3:マンション住民の自治意識が低下する

理事会役員として区分所有者自身がマンション管理に参加することは、自分が住むマンションについて深く考えるきっかけにもなっていました。「自分自身でマンションの環境をよくしていこう」「資産価値が保てるのであれば修繕積立金の値上げも納得できる」など意識が高まることもあります。

第三者にマンション管理を任せっきりにすると、区分所有者の自治意識が低くなってしまう危険性もあるでしょう。また住民同士の交流が減ってしまうことも懸念されます。

マンションの管理方法は慎重に検討しよう

住民の高齢化や役員のなり手不足から、理事会なしマンションは増加傾向にあります。マンション管理における区分所有者の業務負担は減らせるものの、管理費が高くなったり住民の意識が薄くなったりと注意点もあるのが事実です。メリットとデメリットの両面を検討したうえで、どのように管理していくか決めましょう。

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