理事・管理

マンション会計の業務内容とは? 委託できない場合は何をする?

2021.07.02
マンション会計の業務内容とは? 委託できない場合は何をする?

マンションを管理するうえで切り離せないお金の話。修繕積立金や管理費、また修繕費や管理会社への委託費など、管理組合の収入と支出を管理するのが会計です。

そんな会計業務は、簿記の知識が必要で、管理組合だけでやるのはなかなか負担が大きいもの。そのため「管理会社」に委託するケースが多いと言えます。

とはいえなかには、自分たちでやろうと考えている管理組合もあるかもしれません。そこでこの記事では、会計の方法や業務内容など、最低限押さえておくべき予備知識について解説していきます。

マンションの会計方法は2種類ある!

マンションの会計方法は「管理会社」に委託するか、理事会の「会計担当理事」が行うかの主に2種類。それぞれの方法について、詳しく紹介していきます。

【方法1】管理会社への委託

マンションの会計業務は、国土交通省の「マンション標準管理規約」で「管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う」となっています。

ただ、会計の専門的な知識が必要となるために管理組合で行うのは難しく、多くの場合、管理会社に委託をしています。会計業務の一部、もしくは全部を管理会社が代わりに行っている形となります。

【方法2】理事会の会計担当理事が行う

委託をせずに会計担当理事が自ら行う場合も

会計を管理会社に委託せず、理事会の会計担当理事が担当するケースもあります。

ただ未収金や未払金、前払金などの状況を正確に把握するには「貸借対照表」や「財産目録」の作成が必要。これらの業務を行うには、簿記の知識がなければなかなか難しいと言えそうです。

管理会社に委託するときに知っておきたい「分別管理方式」とは?

会計を管理会社に委託するとき、予備知識として押さえておきたいのが、財産の管理方法の一つである「分別管理方式」です。

「改正マンション管理適正化法施行規則」により、この方式はさらに「イ」「ロ」「ハ」の3つに分かれます。どの方式に当てはまるかは、管理会社が交付する重要事項説明書を見れば確認可能。ちなみに以前は「原則方式」「収納代行方式」「支払一任代行方式」の3つの方式で管理されていました。

この「イ」「ロ」「ハ」について、以降でさらに具体的に見ていきましょう。

【1】分別管理方式の「イ」

「イ」の方式では、一旦、区分所有者(マンションの購入者)に納めてもらった修繕積立金と管理費等を「収納口座」へ入金。次に、毎月そのなかから管理業務に必要な費用を引き落とした後、残金と修繕積立金を翌月末日までに「保管口座」へ移します。

管理会社が効率的に出納業務を行えるよう、「収納口座」では通帳と印鑑を一緒に管理します。一方で「保管口座」は預金を積み立てるための口座で、残高が高いこともあり、印鑑とキャッシュカードを一緒に管理することができません。

なお管理組合の預金が万が一損なわれる場合を考慮し、管理会社は1ヵ月分以上の修繕積立金と管理費などの金額を保証する契約を結ばなければなりません。

【2】分別管理方式の「ロ」

「ロ」の方式では、区分所有者に納めてもらった修繕積立金と管理費のうち、管理費は一旦「収納口座」、修繕積立金はそのまま「保管口座」へ入金。そして管理費については、管理業務に必要な支払いを行った後の残額を、保管口座へ移します。

「イ」の方式と同様、管理会社は1ヵ月分以上の管理費などの金額を保証する契約を結ぶことが義務。一方で修繕積立金はそのまま保管口座に入金されるため、保証契約を結ぶ義務はありません。

【3】分別管理方式の「ハ」

「ハ」の方式では「収納口座」と「保管口座」が同じ口座になるため、管理会社は通帳と印鑑を一緒には管理できません。管理会社によって資金が損なわれる心配はないため、保証契約を結ぶ義務はないのです。

ただ、通帳か印鑑のどちらかを理事長(もしくは会計担当理事)が持っておく必要があります。入出金のたびに「理事長が持っている印鑑が必要」となるため、理事役員の手間は増えてしまいます。

会計担当は報告書の作成や入金処理を行う

マンション会計業務の内容を紹介します

管理会社に委託しているケースがほとんどですが、もし理事会で会計を行うとなった場合、どんな業務が発生するのか。改めてまとめました。

【業務1】月次・年次収支報告書の作成

管理組合の収入や支出の状況を知るには、「月次収支報告書」と「年次収支報告書」を作成する必要があります。

会計業務を管理会社に委託している場合、収支報告書以外に、資産のバランス状態が把握できる「貸借対照表」、管理費などの未納状況が戸別で把握できる「未収金一覧表」なども作成してもらえます。

【業務2】入金・支払処理

入金処理では納めてもらった管理費や修繕積立金、また駐車場などの使用料も含め、何号室からいくらの入金があったのかを確認。毎月通帳記帳も行います。

そして支払処理は、共用部の電気料や水道料、設備点検費、工事などをした月はその分の費用を算出し、各業者への支払いまで行います。

管理会社に委託している場合、毎月の支出に関する領収書は管理会社に到着。そして、管理組合の決算月などに、管理会社からまとめて提出してもらえます。

【業務3】未納者への督促

毎月、区分所有者から指定期日までに修繕積立金や管理費などが入金されます。近年では入金の手間、未納を防ぐなどの理由から、口座振替を利用するマンションがほとんど。口座振替の場合は「口座振替結果報告書」、振込みの場合は「通帳記帳」で各区分所有者からの入金を把握することができます。

未納者に対しては、督促を行います。督促の方法としては「書面通知」「電話督促」「訪問督促」など。未納の月が続いている場合などは「内容証明郵便」「支払計画書の提出の要求」「支払督促・少額訴訟」といった法的措置をとることもあります。

【業務4】小口現金の管理

小口現金とは、少額の消耗品や雑費など、急ぎの出費のために必要な現金。具体的には、管理組合で使用する資料のコピー代やファイル代、共用部分の蛍光灯代、プリンターのインク代、清掃用具などが挙げられるでしょう。

会計担当者はこうした小口現金の管理も行います。

【業務5】請求書や領収書の管理・保管

管理会社が管理しなければならない重要書類は、収支決算書の素案、組合員別の管理費負担額の一覧表などです。このほか「見積書」「請求書」「領収証」なども保管しておいてください。

管理会社に委託している場合、管理しなければならない重要書類は管理会社が作成してくれます。中身をチェックし、書類の内容を把握しておきましょう。

理事会で会計を行うなら「収支報告書」「単式簿記」が必須

度々お伝えしているように、理事会の会計担当理事の負担を避けるためには、管理会社に委託するのが基本です。

予算の関係など、委託する余裕がないのなら「収支報告書」だけでも作成するようにしてください。できれば「複式簿記」で、貸借対照表や財産目録も作成しておきたいところですが、簿記の知識が必要です。難しいようなら、家計簿や町内会の会計レベルの「単式簿記」にすると良いでしょう。

会計業務の1年の流れ

管理組合の決算が3月であれば、4月から翌年3月までの1年が会計年度となります。この1年の間に行う会計業務を見ていきましょう。

まず、毎年収支予算案を通常総会で提出し、組合員の承認を得てから年度がはじまります。必要に応じて、事業計画や長期修繕計画の修正や新規作成を行い、年度が終了したら、1年の業務をとりまとめた事業報告書と会計報告書を作成します。

なお、これらの書類は総会で組合員による承認が必要です。総会の開催2週間前までには、開催案内とともに組合員に通知します。

毎月行う業務としては、入金・支払い処理、請求書や領収書の管理・保管、毎月の収支報告などが挙げられます。

マンションの会計は管理会社に委託したほうがいい

マンションのなかには理事会の「会計担当理事」が担うこともある会計業務。ただ、多くの管理組合では管理業務の専門業者である「管理会社」に委託しています。

なぜなら今回紹介した内容を見てもわかる通り、入出金から収支報告書の作成など、業務内容が多岐にわたるため。

予算の関係で委託できない場合、「収支報告書」の作成や、「単式簿記」での帳簿付けは最低限行いましょう。

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