連載:理事会役員超入門

管理会社を変更するメリットとは? 失敗しやすいパターンも紹介

2023.04.27
管理会社を変更するメリットとは? 失敗しやすいパターンも紹介

清掃や設備メンテナンスといった共用部分における日常の管理業務は、ほとんどの管理組合が管理会社に委託しているでしょう。

もしも、現在の管理会社のサービスに不満がある場合は、別の管理会社へ委託先の変更が可能です。

しかし、安直に管理会社を変更すると、後々後悔してしまう場合もあるので注意が必要。今回の記事では、管理会社変更のメリット・デメリットや注意したいポイントを紹介します。

管理会社変更で得られるメリットは大きく2つ

管理会社の変更には、総会決議による承認が必要です。総会に議案をあげるためには、新しい管理会社の選定や見積もりの取得など、時間と手間をかけて準備をしなければなりません。

多大な労力を費やしてまで、管理会社の変更を実施すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。大きな2つのメリットを見ていきましょう。

【メリット1】管理委託費削減が見込める

管理費削減は最大のメリット

毎月管理会社に支払う管理委託費の減額を見込めるという点は、管理会社変更を実施する最大のメリットです。

新築マンションでは、契約している管理会社が分譲を行ったデベロッパーの子会社であるというケースが多く見られます。そのため、これまで一度も管理会社を変更した実績がない管理組合は、新築時からデベロッパー系列の管理会社と契約し続けている可能性が高いでしょう。

一般的に、デベロッパー系列の管理会社は、親会社が大手企業であるケースが多く、高いブランド力を有するため管理委託費を高額に設定しがちです。

現在デベロッパー系列の管理会社に委託しているマンションは、デベロッパー系列ではない管理会社に委託先を変更すると、月々の管理費用の削減につながるかもしれません。

【メリット2】管理品質向上に期待できる

管理会社を変更するとサービスの質が向上する可能性がある

管理会社のサービスの質に不満を感じているなら、委託先の変更を検討するべきかもしれません。

マンションの管理会社は、全国に2,300社以上存在しているといわれています。管理業務の内容は会社によって違いがあるため、管理会社を変更すればサービスの質が向上するかもしれません。

委託先の変更時に、新しく契約する管理会社へ現在の管理会社の不満な点を伝えておけば、改善点を補うようなサービスを受けられるでしょう。

管理会社を変更で起こり得るデメリット2つ

管理会社の変更によってメリットを得られる可能性がある一方で、デメリットが発生してしまう場合もあります。

考えられるデメリットについても確認しておきましょう。

【デメリット1】管理の質が低下する可能性がある

管理会社変更は、経費削減や品質向上につながる可能性がありますが、選び方を間違えると逆に管理の質が低下してしまうかもしれません。

仮に、変更によって管理委託費が削減できたとしても、「新しい管理会社になってから共用部分のゴミが増えた」「廊下の電球が切れているのに、いつまで経っても交換してくれない」といった事態が頻発するようになれば、管理会社の変更に成功したとは言い難いでしょう。

ただし、変更から間もない期間中は、管理会社がマンションに慣れていないために、適切な管理を行えない場合も考えられます。管理が行き届いていないと感じる時は、まずは管理会社と話し合いをしてみましょう。

【デメリット2】トラブルにつながる恐れがある

もうひとつのデメリットは、管理会社の変更によってトラブルが発生するかもしれない点です。

管理会社の変更は、総会出席者の過半数が賛成すれば実施できます。しかし、正式な手順を経て変更に至っていても、反対意見を持つ人や、総会に参加しなかった管理組合員からクレームが出されるかもしれません。

そのような状況を避けるためにも、総会の場では変更するメリットなどをしっかりと説明しておきましょう。承認を得た後にも、変更が決定した旨をマンション全体へ向けて案内するといった、丁寧な情報共有をしておけばクレームが発生しづらくなります。

また、変更前の新旧管理会社の引き継ぎにも要注意です。引き継ぎが適切に行われないと、管理会社変更後になって、重要書類や鍵などの貴重品がどこにあるかわからなくなるといった事態が起きるしれません。

管理組合の貴重品は、現在の管理会社と所在を確認したうえで、新しい管理会社に引き継ぎましょう。

管理会社変更で失敗しやすいパターン3選

ここからは、「せっかく管理会社を変更したのに、期待したのと違う……」というような、失敗に陥りやすい3つのパターンを紹介します。

管理会社変更で後悔しないためにも、参考にしてみてください。

【パターン1】サービス内容を確認していない

新しい管理会社のサービス内容は、しっかり確認しておかなければ失敗のもとになりかねません。

変更前の管理会社がしてくれていた業務であっても、新しい管理会社では契約内容に含まれていないので対応してくれない、というケースも考えられます。

「新しい管理会社も当然やってくれるだろう」と思い込まずに、サービスや契約内容は契約前にしっかりと確認しておきましょう。

【パターン2】営業担当者の人柄だけで判断する

契約後に管理業務を行うのは現場担当者なので営業マンの人柄で決めるのは不適切

管理会社の営業担当者から、卓越したセールストークやプレゼンテーションでアピールされると、その業者に魅力を感じられるでしょう。

しかし、営業マンの話ばかりでは、サービスの悪い面が見えにくいため、契約後になって気付かなかったデメリットが発覚するかもしれません。

管理組合にとって本当に重要なのは、営業力よりも管理業務の質。どれほど営業マンが優秀であっても、契約後に管理業務を行うのは現場担当者です。

そのため、委託先の選定段階で、管理会社からプレゼンテーションを受ける際には、現場担当者の方にも参加してもらい、人柄をみたり、管理業務について質問したりする機会を持てると良いでしょう。

【パターン3】評判・口コミで判断する

ユーザー目線の意見を手軽に収集できるインターネットの口コミ情報は、管理会社選びでも大いに活用可能です。

しかし、口コミによる情報やランキング記事などは、個人の主観による極端な内容も多く見られます。必ずしも、手放しで信用できる情報ばかりではない点には注意が必要です。

評判や口コミは、鵜呑みにするのではなく、他社と比較するための参考材料程度に留めるが望ましいでしょう。

管理会社変更後のトラブルを防ぐ方法

管理会社は、管理組合にとって重要な存在であるため、変更によってトラブルが発生する可能性も考えられます。

管理会社の変更に関連した、トラブルを回避するための対策を見ていきましょう。

【対策1】成功報酬型の管理会社変更はデメリットを理解しておく

管理会社の変更を成功報酬型のコンサルティング会社を通して進める場合は、事前にデメリットを理解しておかなければなりません。

成功報酬型は「削減できた管理費の〇%の金額」を報酬として支払う方法です。コンサルティング会社は、管理費を安くできた額に比例して得られる報酬がアップするため、管理委託業務の見直しを厳しく行う傾向にあります。

実際に管理業務を担当する管理会社としては、管理費が削減された分、業務の簡略化を余儀無くされるでしょう。そのため、管理組合からすると、管理費用が安くなったとしても、受けられるサービスの質が低下しやすい方法といえます。

コストを低下できても、サービス品質の低下が起きないように、管理会社の選定方法にも注意しましょう。

【対策2】安易な値下げを実施しない

新しい管理会社へ業務委託を開始すると、事前に想定していた内容と実際に受けられるサービスにかい離がみられるかもしれません。話し合いによって改善する小さなレベルであれば問題ありませんが、深刻な場合には、再度管理会社の変更が必要となる場合も。

そのため、管理会社の変更によって管理費のコストカットに成功していたとしても、管理組合で集める管理費をすぐに値下げするといった、安易な還元に踏み切るのは要注意。値下げした管理費に合わせて管理会社探しをすると、候補となる管理会社の選択肢が少なくってしまうためです。

管理会社の変更後しばらくは、新しい管理会社のサービスが満足いくものかどうかを判断するために見極め期間を設けておくのがおすすめです。一定期間を経ても問題がみられないのであれば、管理費の値下げを検討してもOKでしょう。

【対策3】不満があれば契約解除を検討する

もしも、管理会社のサービスに満足できなければ、契約解除も検討しましょう。

別の管理会社に契約変更する場合は、管理会社の選定や総会の準備などで少なくとも3ヵ月程度の期間がかかります。

また、管理会社との契約内容に解約予告期間が定められている場合は、書面で契約解除を申し出ても、条件となる予告期間を満たすまで委託先の変更を行えません。

問題が出た際になるべく早く契約解除するためには、初年度は契約期間を1年に設定しておくといった対策が有効です。

まずは現在の管理会社に相談を

管理会社の変更は、コストや品質の改善に期待ができますが、逆に改悪してしまう場合もあるため注意が必要です。

新しい管理会社に対しても不満が出るようであれば、再度変更が必要になる場合も考えられます。管理会社の変更には時間も労力も必要となるため、変更を進める前に、まずは現在委託している会社と話し合いの場を設けて、改善できないか相談してみましょう。

イラスト:大野文彰

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この連載について

【連載】理事会役員超入門

マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!

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