大規模修繕

大規模修繕の議決にはどんな方法が?内容によって方法が異なる!

2022.04.28
大規模修繕の議決にはどんな方法が?内容によって方法が異なる!

マンション大規模修繕にかかる費用は、一戸あたり75〜125万円が相場とされています。多額の費用が発生するため、住民の理解を得ないまま進めてしまえば、後々クレームが出されてしまう恐れも。

そのようなトラブルを防ぐためにも、総会の場で管理組合員による決議を得ておくのは非常に重要です。今回の記事では、住民から大規模修繕の承認を得るために必要となる、総会での議決方法についてご紹介します。

大規模修繕の議決方法は『普通決議』と『特別決議』の2つ

重要な意思決定は総会で行う

マンションの大規模修繕は、安全で快適な暮らしや、資産価値の維持へとつながる、マンション管理組合にとって非常に重要な行事。管理組合の代表として執行業務を担う理事会であっても、大規模修繕を独断で進められず、重要な意思決定には総会の場での議決が必要です。

管理組合の総会決議は、議決する内容に応じて「普通決議」と「特別決議」のいずれかの方式が用いられます。2つの方式の違いは、決議を取るために必要な要件です。区分所有法では、普通決議よりも特別決議の方が、成立させるための条件が厳しく設定されています。

以前は、大規模修繕に関わる内容は、すべて特別決議で決められるのが通例でした。しかし、大規模修繕に該当する共用部分の工事であっても、その規模はピンキリ。軽微な修繕の場合でも、わざわざ総会の場で議決を取らなければならないのであれば、管理組合にとって大きな負担となるでしょう。

そこで、大規模修繕に関わる決議について定めた区分所有法17条第1項に記載されている「共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く)」という条文に注目が集まります。この条文の解釈を巡り、"低予算の内容であれば、普通決議でも良いのではないか?”という趣旨の意見が多く出されました。

このような状況を受け、2002年に区分所有法の条文が改正されています。改正後の条文では「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)」という内容に変更されました。この改正によって、現在では、大規模修繕に関わる内容であっても「形状または効用の著しい変更」をともなわない修繕は「軽微変更」に区分され、普通決議で足りるとされています。

普通決議と特別決議は可決に必要な議決数が異なる

一般的な普通決議は出席者の過半数で成立

普通決議は、改訂後の区分所有法による「形状または効用の著しい変更」をともなわない軽微な工事が該当します。軽微な工事の例は、外壁補修工事、屋上防水工事、鉄部塗装工事、給排水管更新工事などです。

区分所有法では、普通決議について「集会での議案の議決は、原則として区分所有者数の過半数および議決権の過半数の賛成で可決する」と定められています。委任状や議決権行使書も出席者の票と同等に扱われるので、集会に参加できない組合員も議決への参加が可能です。

成立要件が比較的易しいとされる普通決議ですが、管理組合の出席率が低い水準のマンションでは、条件を満たすのが困難な場合もあるかもしれません。そのような状況を見越して、区分所有法第39条第1項では、管理規約で普通決議の成立要件をあらかじめ過半数よりも少なく設定しておくのも可能であると定めています。

特別決議は議決権数の4分の3以上必要

特別決議は議決権数の4分の3以上の賛成が必要

一方の特別決議は「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成」が成立要件。普通決議よりも条件が厳しく設定されています。

区分所有法では、形状または効用の著しい変更をともなう修繕は「重大変更」となり、特別決議が必要です。

重大変更には、エレベーターの設置工事や、集会場や駐車場の増改築工事などが含まれ、これらの工事を行うには特別決議が求められます。

区分所有法で定められている、特別決議が必要となる事項は以下の8つです。

1. 管理規約の設定・変更・廃止(第31条)
2. 管理組合法人の成立(第47条)
3. 共用部分等の変更(第17条・第21条)
4. 大規模滅失における建物の復旧(第61条第5項)
5. 建物の建替え(第62条)
6. 専有部分の使用禁止の請求(第58条)
7. 区分所有権の競売の請求(第59条)
8. 占有者に対する引渡し請求(第60条)

「5.建物の建替え」についての決議は、例外として5分の4以上の賛成票が必要となるので注意しましょう。

議決権は戸数に応じて付与する

議決権の付与について、区分所有法第14条では「専有部分の床面積で議決権を定める」と記述されています。しかし、床面積を元にすると複雑な計算が必要になるため、この方式はほとんどのマンションで採用されていないのが現状です。

最も一般的なのは、所有している戸数に応じて議決権を付与する方法だとされています。例えば、1つのマンションに1戸の住戸を所有している者には議決権を1付与。5戸の所有権を持つ区分所有者がいる場合、その人物には議決権が5付与されるという方式です。

今後、管理規約を改正する予定があれば、戸数ごとに議決数を決める方式の方が、管理が簡単だという点を覚えておきましょう。

決議方法に迷わないためにも、管理規約を見直そう

2002年の区分所有法改正によって、大規模修繕における決議は、工事の内容によって「普通決議」で実施できるケースと「特別決議」が必要なケースに分かれるようになりました。

「軽微変更」か「重大変更」かの判断は、マンションの形状や設備、管理規約の内容によって違いが出てくるでしょう。工事の内容によっては、どちらが適切なのかという判断で迷う場面も出てくるかもしれません。そのような状況を防ぐためには、あらかじめ管理規約上に詳細を定めておくのが効果的です。

2002年以降に管理規約の見直しを行っていないマンションでは、改正後の区分所有法の内容に合わせた規約の変更がされていないかもしれません。不安に思ったら、この機会に1度、管理規約の見直しをしてみましょう。

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