理事・管理

騒音苦情への管理組合の対処方を解説! 放置はトラブルに発展?

2023.06.29
騒音苦情への管理組合の対処方を解説! 放置はトラブルに発展?

マンションの管理組合には、マンションで起こるトラブルの相談が持ち込まれることがあります。

内容は多岐にわたりますが、中でも多いのが近隣の居住者による「騒音」の相談です。

今回は、騒音問題の原因や、相談があった際の対処方法を解説します。

マンションで起こる騒音は2種類に分類される

空気伝搬音

テレビやオーディオの音や人の話声は空気伝搬音に該当する

空気伝搬音とは、空気の振動によって伝わる音です。テレビやオーディオの音、外や上階から聞こえる話声などが該当します。

空気伝搬音による騒音被害は、エアコンの穴を塞いだり遮音材や防音材を用いたりして、部屋の気密性を高めることで改善する場合があります。

固体伝搬音

椅子を引く音や、上階の居住者の足音などが固体伝搬音

固体伝搬音とは、壁や床、コンクリートの構造材を振動させて伝わる音です。例えば、椅子を引く音や、上階の居住者の足音、物を落とした際の音などが該当します。

固体伝搬音は、居住者が音を立てているという自覚がないケースが多く、トラブルが起こりやすい傾向です。

また、騒音の原因が隣接している部屋の音とは限らないため、発生源の特定が難しいケースもあります。

騒音による苦情が発生する理由

生活様式の違いによって苦情の出やすさに違いがある

家族構成の違い

騒音を許容できるか、苦情に発展するかの違いは、居住者の家族構成が分かれ目となる場合があります。

例えば、子どもが走る足音や赤ちゃんの夜泣きなどはトラブルに発展しがちですが、騒音の影響を受ける側の居住者が子育て経験を持つ場合、自身も子育てで騒音を出す側の立場であった体験をしているため、理解を得やすく許容されやすいでしょう。

一方で、単身者や子どものいない世帯からの理解は得づらく、トラブルに発展する可能性が高くなります。

生活リズムの違い

居住者ごとの生活リズムの違いも、騒音トラブルの大きな理由です。

夜遅くに帰宅した隣人のドライヤーや洗濯機、掃除機などによる生活音は問題になるケースが多くあります。

また、近年は企業がテレワークの導入を推進していることもあり、日中も自宅にいる居住者が増えています。テレワーク中に他の居住者の家事の音や、子どもの足音などが気になってしまい、騒音トラブルが発生するケースも増加傾向です。

騒音の苦情が来たときの対処法

【1】原因を特定する

ここからは、管理組合に騒音によるクレームが出された場合の対処方法を紹介します。

まずは、騒音の原因を特定するための調査をします。

騒音の苦情を入れた居住者と、原因と考えられる居住者それぞれにヒアリングを行いましょう。騒音の発生源が特定できない場合は、近隣の居住者に電話や訪問をしながら聞き込みの調査を行います。

調査の際は、騒音が固体伝搬音の場合は、騒音の原因は必ずしも隣接する部屋ではないことがある点に留意しましょう。苦情を入れた居住者の話を鵜呑みにせず、客観的に判断することが重要です。

【2】入居者全員に注意喚起する

調査が終了したら、マンションの居住者に注意喚起を行います。マンション全体に注意喚起するには、文書の投函や共用部分への掲示が効果的です。

注意喚起する際のポイントは2つ。

1つ目は「入居者を直接名指ししない」です。直接個人名を示して周知してしまうと、名指しされた入居者とほかのマンション居住者との関係性が悪くなり、騒音とは別の問題が発生するなど、状況が悪化してしまうかもしてません。

2つ目は「発生元の入居者が『自分のこと』だと分かるようにすること」です。ほかの住民に個人の特定が難しい範囲で、どのような騒音なのかや、発生する時間帯など、当人が気付きやすい情報を記載しましょう。

【3】騒音を計測する

騒音測定器で騒音の程度を計測

入居者への注意喚起を行っても事態が収まらなかった場合は、さらなる調査を続ける必要があるでしょう。

まずは、騒音測定器で騒音の程度を計測します。後述する騒音の原因となる居住者に連絡する際に、客観的な数値を提示するためです。

なお、環境省の「騒音に係る環境基準について」によると、維持されることが望ましいとされる昼間の基準値は55デシベル、夜間は45デシベル。これらの数値を上回ると、騒音であると考えられます。

【4】騒音元の入居者に連絡

騒音の程度を確認したら、発生源と考えられる居住者に直接連絡します。

本人に騒音を立てている自覚がない場合もあるため、事実を説明すれば改善が図れる可能性があります。そのため、連絡や説明の際には威圧的にならないよう注意しましょう。

一方的な決めつけや、高圧的な態度は、発生元の居住者の態度を頑なにしてしまい、さらなるトラブルに繋がる危険性があります。

【5】話し合いの場を設ける

管理組合による連絡でも解決しない場合は、話し合いの場を設けましょう。

騒音トラブルは当事者同士が感情的になりやすく、話し合いが拗れると事件に発展してしまう恐れもあります。

そのため、当人同士だけで話し合わせるのではなく、管理会社の担当者や管理組合の理事など、第三者が仲裁に入るようにしましょう。

騒音トラブルを放置する3つのデメリット

【デメリット1】退去者が出やすくなる

騒音は居住者にとって大きなストレスになります。問題が解決しないと、相談に来た居住者が退去してしまうかもしれません。

また、管理組合に相談しない居住者も同じトラブルで悩まされている場合があります。騒音が原因で退去者が出ると、他の人も連鎖的に退去してしまい、空室率の上昇に繋がりかねません。

【デメリット2】警察沙汰や訴訟に発展する恐れがある

管理組合や管理会社で事態を解決できないと、相談者が警察に通報したり、訴訟を起こしたりする可能性もあります。

警察への通報や訴訟に発展すると、解決までに多くの時間を要します。そこまで自体が深刻になる前に、管理組合が間に入り話し合いの場を設けて解決することが望ましいです。

【デメリット3】悪い口コミが増える

問題が解決せず拗れてしまうと、相談者にマンションの口コミ情報サイトにトラブルの内容や対応の悪さについて書かれてしまうこともあります。

マンションに対する悪い口コミがサイトに掲載されていると、それを見たユーザーがマンションへの入居を断念する可能性があるほか、トラブルの当事者が書き込みを見つけてしまい、事態がますます悪化する可能性もあるでしょう。

問題が解決するまでは、口コミサイトやSNSでの発信を避けてもらいましょう。

管理会社とも連携して慎重な対応を

騒音の苦情が入った際は、原因の特定がまずは重要です。

調査の際は、特定の居住者が原因であると決めつけず、客観的にヒアリングを行いましょう。

調査や話し合いには、管理会社の担当者に協力してもらうのも有効な手です。警察への通報や訴訟といった深刻な事態への発展を避けるためにも、貼り紙の掲示や話し合いの場を設けるといった対応は早めに行いたいですね。

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