相続登記が4月に義務化! 申請に必要な書類や手続きとは?
不動産の所有者が亡くなったとき、相続によって所有権を移転登記する手続きを「相続登記」といいます。
相続登記を行わないと、不動産の所有権を主張できず、売却もできません。ここでは相続登記の前に知っておくべき4つのポイントと、申請のために用意すべき書類について紹介していきます。
相続登記が義務化され、過去の相続分の申告も必要に
不動産の所有者が亡くなったとき、相続によって所有権を移転登記する手続きを「相続登記」といいます。
法改正により2024年4月1日から相続登記が義務化されました。過去に相続された不動産で、まだ登記を行っていない物件がある場合には、申告を行う必要があります。
相続登記の前に知っておくべき4つのポイント
【ポイント1】遺言書には3種類あり、保管場所が異なる
不動産の所有者が亡くなり、相続を行う際には、まず被相続人が生前に遺言書を作成していたかを確認してください。
遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。このうち、「公正証書遺言」は公証役場に保管され、「自筆証書遺言」は法務局に保管されている可能性があります。遺言書の有無を確認したい場合には、それぞれの保管場所に確認しましょう。
なお、遺言書は「全文を遺言者が自書する」などの要件があり、遺言の種類によって要件内容が異なります。要件に満たない遺言書は法的効力を持ちません。
【ポイント2】相続財産のうち不動産の有無は名寄帳でわかる
遺言書がない、もしくは遺言書に財産の承継内容についての記載がない場合には、相続財産の調査が必要です。
相続財産のうちマンションなどの不動産については、権利証や登記情報通知書、固定資産税納税通知書などの資料で確認できる場合があります。
また、固定資産課税台帳に登録された土地や家屋は、納税義務者ごとに「名寄帳」という書類にまとめてあります。ただし、名寄帳は市区町村が作成しているため、調査の際には、被相続人が不動産を所有していると思われるすべての市区町村に、書類の請求を行ってください。
なお、相続の放棄、および相続で得た財産を限度として債務も受け継ぐ限定承認は、相続の開始を知ってから3ヵ月以内に行う必要があります。相続をスムーズに行うためには、相続財産の全貌をなるべく早めに調べておくと良いでしょう。
【ポイント3】遺産の分割内容を協議し、書類を作成
被相続人が遺言で禁じている場合を除き、相続人は「誰がどの遺産を相続するか」を、協議によって定められます。この協議を「遺産分割協議」といいます。
遺産は以下の4つの方法で分割します。
・現物分割……相続財産を現物のまま分割する方法
・代償分割……相続財産を一部の相続人が現物で相続したうえで、他の相続人の相続分に相当する価額の支払い義務を負う方法
・換価分割……相続財産を売却し、売却益を分配する方法
・共有分割……相続財産の一部または全部を、相続人で共有する方法
遺産分割協議で決まった遺産の分割方法、相続の割合などは、「遺産分割協議書」に記載。相続人全員が署名し、実印を押印したうえで、同じ物を1人1通ずつ所持します。
なお、相続人全員が一堂に会するのが難しい場合には、遺産分割協議書を回覧・署名押印して、全相続人の合意をとりましょう。
【ポイント4】分割協議の内容で相続税を申告
相続税の申告手続きは、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に行う必要があります。
申告手続きでは相続税申告書に、相続財産、債務と葬式費用などの必要事項を記載します。さらに、書類の様式に従って相続税の総額、配偶者の税額軽減額を計算。各人が納付すべき税額を算出します。
なお、相続税には3000万円の基礎控除があり、さらに「法定相続人の数×600万円」が課税価格から控除されます。このうち「法定相続人の数」は、相続を放棄した相続人の数も含みます。
相続登記に必要な書類を取り寄せ&自作する
マンションの相続登記には、状況別に以下の書類が必要となります。
■遺言書がある場合
・被相続人の遺言書
・被相続人の戸籍謄本(戸籍事項証明書)
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の改製原戸籍
・被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
・新しい所有者の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)
・新しい所有者の固定資産課税明細書
・新しい所有者の住民票
・登記申請書
・相続関係説明図
■遺産分割協議を行った場合
・被相続人の戸籍謄本(戸籍事項証明書)
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の改製原戸籍
・被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
・法定相続人の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)
・法定相続人の印鑑証明書
・法定相続人の固定資産課税明細書
・新しい所有者の住民票
・登記申請書
・遺産分割協議書
・相続関係説明図
■法定相続分の相続の場合
・被相続人の戸籍謄本(戸籍事項証明書)
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の改製原戸籍
・被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
・法定相続人の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)
・法定相続人の固定資産課税明細書
・法定相続人の住民票
・登記申請書
・相続関係説明図
このうち、戸籍謄本は本籍地の市区町村、印鑑証明書は住所地の市区町村というように、書類によって入手先が異なります。
さらに、登記申請書など一部の書類はフォーマットに従って自ら作成し、相続登記を委託する場合には委任状も必要です。
相続登記に必要なコストとは?
相続登記には税金がかかる
所有権の移転、抵当権の設定、配偶者居住権の設定などの申請を行う際には、登録免許税を納付します。相続登記における税額は、土地・建物ともに「課税標準×4 / 1000」です。
マンションの場合、土地の評価額は「固定資産評価証明書」に掲載されているケースが多いようです。固定資産評価証明書は市区町村の担当課から取得できます。ただし、多くの場合はマンション全体の評価額が記載されているので、敷地権割合を乗じた額が実際の評価額となります。
気になる司法書士への報酬金額は?
相続財産の調査から必要な書類の入手、相続人の意思確認、登記の申請など、相続登記に必要な手続きは司法書士に依頼できます。
費用はエリアや不動産物件数、相続人数などによって異なりますが、一般に5万円〜15万円程度が相場のようです。
「相続財産の調査のみ」というように、一部の作業だけでも司法書士に依頼できます。なお、書類の取得のために交通費がかかる場合は、実費請求されるケースもあります。
故人が賃貸経営者だった場合は確定申告が必要
相続登記が終わったら、マンションの管理組合に申し出を行い、以降は所定の手続きに沿って管理費や修繕費用を支払います。被相続人が滞納していた管理費の支払いも、相続人の義務です。
なお、相続したマンションで被相続人が賃貸経営を行っていた場合には、代わりに相続人が確定申告を行います。相続人が確定申告を行うことを「準確定申告」といい、相続の開始を知った日の翌日から4ヵ月以内に、申告と納税を行う必要があります。
相続登記は時間制限付き!司法書士の手も借りたい
被相続人からマンションを相続し、相続登記を行うには、相続財産の調査にはじまって、遺産の分割協議、書類の取り寄せなど、さまざまな手続きが必要となります。
相続放棄は3ヵ月以内に、相続税の申告・支払いは10ヵ月以内に行うため、タイムリミットを考えながら動かないと、手続きが間に合わない恐れもあるでしょう。
仕事が忙しくて時間がとれない場合などは、司法書士の手を借りられます。少しでもコストを安く納めたいなら、自分の手の届く範囲で手続きを行うとよいでしょう。